校正「球」を採用する理由
接触角計・表面張力計コラムのページにご訪問いただき、ありがとうございます。
本日のテーマは、キャリブレーションで校正『球」を採用する理由です。
あすみ技研では接触角計のキャリブレーション(校正)には直径3mmのステンレス製の球(私たちは校正球と呼んでいます)を使用します。接触角計のキャリブレーション(校正)の考え方についてはこちらのコラムをお読みください。
私も入社したばかりの頃に接触角計のキャリブレーション(校正)については先輩から教えてもらったのですが、「なぜ球を使って行うんだろう・・・・」と感じたことを覚えています。球じゃなくてもいいと思うんですよね。キャリブレーション(校正)の考え方からすると。「●」のイラストを書いた紙やプラスチック板(平面)でも全然いいと思うんです。コストも抑えられるはずですし。それなのにわざわざ球・・・・もちろん理由があります。
なぜ平面(紙やプラスチック板ではなく『立体の球』)ではないのでしょうか?
まずは実際の校正球を御覧ください。
透明ブロックの中心に埋め込まれているのが校正球です。これを接触角計のカメラで撮影し、直径3mmの校正球が接触角計のカメラでは何pixelに相当するのかを確認する。これが接触角計のキャリブレーション(校正)作業になります。
それではここで先ほどの疑問に戻りましょう。何故、球を使ってキャリブレーション(校正)を行うのでしょうか?結論から先に言ってしまえば、「球」であればどの方向から撮影しても見え方は変わらないのでキャリブレーション(校正)の結果に差は「ほぼ」生じません。これがあすみ技研が接触角計の校正に「球」を採用している理由です。
「ほぼ」というのは、カメラフォーカスの合わせ具合によって若干は差が生じる可能性があるという意味になります。ですが、これについては手順通りに行った上での差であれば許容範囲内と考えて問題なく、この差によって測定値が大きく異なるといったことはございませんのでご安心ください。当然ですがキャリブレーション(校正)はある程度、装置の扱いに習熟した方がやられることが前提となります・・・・。
接触角計は絶対評価の装置ではなく、相対評価の装置になりますのでキャリブレーション(校正)は他の測定器ほどシビアに考えなくても実使用上は問題ございません。
ですが、キャリブレーション(校正)に使う校正球の精度は言うまでもなく重要です。校正球がちゃんと3mmで作られていなければキャリブレーション(校正)も当然狂ってしまいます。
当社ではキャリブレーション(校正)に使う校正球を日本品質保証機構という機関に依頼し、校正を取っています。校正精度は±1μmと高精度でトレーサビリティ体系図もしっかりしていますから、品質や信頼性も十分にあります。
これが校正証明書と校正結果、そしてトレーサビリティ体系図です。
あすみ技研では御客様に安心して装置をご利用いただけるよう、このような体制をとっております。
校正『球』でのキャリブレーション(立体)
続いて、実際に校正球でキャリブレーション(校正)を行った時の画像をご覧ください。
いかがでしょうか。
校正球が接触角計のカメラに正対していても少し斜めになっていたとしても、接触角計のカメラに映る像の見え方は変わらず球は球のままです。これであれば、キャリブレーション(校正)の結果に差はほとんど生じません。画面に表示される「推定液量表示」にもほとんど差はありません。
イラスト(平面)でのキャリブレーション
さて、では今度はイラスト(平面)で校正球の代用をすることを考えてみましょう。
カメラに対してイラストを置く向きによっては歪んで見えることもあるのではないでしょうか。これはキャリブレーション(校正)の誤差に繋がります。言葉では少しイメージしづらいかもしれませんので、実際にイラストを使ってキャリブレーション(校正)作業を行ってみました。写真をご用意しましたのでこちらをご覧ください。
このように「●」のイラスト(平面)の場合は斜めになってしまうとカメラに映る像が歪んでしまい、キャリブレーション(校正)の誤差に繋がります。推定液量表示もイラストがななめになると歪んで映る為、表示値が変わります。変るということはキャリブレーション(校正)の結果にも影響を及ぼしやすいということに・・・・。つまりは平面を使って接触角計のキャリブレーション(校正)を行う際にはイラストを置く向きというか、方向にとても気を使うことになるということです。
当社では、できるだけ作業をシンプルに簡単にして安心して御客様に装置を使っていただけるようにしたい。こう考えてあすみ技研では接触角計の肝であるキャリブレーション(校正)において「球」を採用しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(T.S)