ロータス効果は油(食用油)もはじく?

いつもお世話になっております。接触角コラム担当のT.Sです。今回のテーマは何となく結果は予想できるけれども実際はどんな風になるんだろう・・・というような内容です。

今回のテーマは「ロータス効果は油(食用油)もはじくのか?」です。私の予想としては「はじかない」ですが、皆さんはどうお考えでしょうか?

今回も実際に測定をしてみるのですが、その前に簡単ではありますがロータス効果とはなんぞやというところをご説明させていただきます。

※この記事を読んでいただいているということはロータス効果について御存じの方がほとんどとは思いますが、おさらいということで。

ロータス効果(Lotus effect)とは

ロータスとは英語で「Lotus」、つまり蓮(ハス)を意味する言葉です。蓮の葉は表面にワックスのような成分が分泌されているため、それだけでも撥水効果はあるのですが、それに加えて葉の表面が微細な凹凸構造になっています。ワックス成分に加えてこの微細な凹凸構造があることで更に濡れにくくなり、蓮の葉の表面は超撥水表面となっています。蓮の葉はこれにより濡れない自浄作用を有していて、この自浄性のことをロータス効果と呼んでいます。

世に出ている製品にもロータス効果は利用されています。蓮の葉はワックス成分+微細凹凸構造による超撥水表面ですが、製品に利用されているロータス効果は微細凹凸構造が主のようです。

 

蓮の葉は用意できなかったので(今の東京都は不要不急の外出は控えなければなりません!)、今回は人工的にロータス効果を付与されているあるもので測定を行ってみようと思っています。こんなところにもロータス効果は利用されているんです。弊社のコラムでも度々登場しているアレになります。それでは今回もよろしくお願いします。

それでは測定をしてみます。アレの登場ですね・・・。もったいぶるほどのものでもないのでお見せしますと、アレの正体はこれです。

ヨーグルト写真
いつものアレ
撥水状態の接触角
いつものアレの濡れ性(精製水)

ヨーグルトの容器・・・ではなくて、ヨーグルトのフタの裏です。全てのヨーグルトのフタの裏がそうではないと思いますが、ロータス効果が利用されているフタも存在します。今回はそれを使って測定を行っていきます。

ちなみに食用油の測定前に精製水での測定も行ってみましたが、写真見ていただいたらわかると思います。かなりの撥水性能です(接触角約147°)。食用油ではどうなるでしょうか・・・。

測定条件

  • 測定場所:あすみ技研LAB(一般環境) ← ラボ紹介コラムありますのでぜひ!!
  • 測定環境:温度24.9℃ 湿度54%
  • 使用装置:接触角計B100
  • 針サイズ:20G(テフロンチューブ取付)
  • 懸滴量:1.5μL ※針先の残液を考慮、着液量1μL狙い
  • プローブ液:コーン油
  • 測定回数:5回
  • 測定時間:5秒間
  • 温度条件:常温

測定結果

図1-a.測定グラフ(経時変化測定)
図1-a.測定グラフ(経時変化測定)
図1-b.着液直後の液滴画像
図1-b.着液直後の液滴画像
図1-c.着液5秒後の液滴画像
図1-c.着液5秒後の液滴画像

※それぞれ接触角の画像は平均値に近い状態を一枚選定しました。

弾きませんでした・・・。ロータス効果は撥水性能のみ有するということになりますね。

 

ちなみに冒頭で「弾かない」と予想したのには2つ理由があります。

1つ目の理由は水と食用油では表面張力が明らかに異なるということです。水も食用油も温度で多少の表面張力値の大小はありますが水で約72mN/m、食用油で約30mN/mです。表面張力値が倍以上違うので、さすがに油は水のようにはじかないのではと想像しました。

2つ目の理由は表面自由エネルギー値です(以下、長いのでSFEとします)。実はコラムとしてUPはしていないのですが、過去にSFE計算で「Kitazaki & Hata」の理論式を使ってヨーグルトの蓋の裏のSFEを計算してみたことがあります。

その時の成分値を見ると食用油はきっとはじかないで濡れ広がるだろうなぁという数値でした。今回それを踏まえて実際にどうなんだろう・・・とやってみたところ、予想通りだったというわけです。

もっと知見のある方からしたら論拠の乏しい予想と思われるかもしれませんが当たりましたね。ちなみにですが、世の中には撥水性と撥油性を有する「ウルトラロータス」なるものがあるようです。興味のある方はお調べになってみてはいかがでしょうか?

今回のコラムが御客様のお役に立つかはわかりませんが、ここまで読んでいただきまして

ありがとうございます。これからもあすみ技研をよろしくお願いします。

(T.S)