液体の劣化具合と表面張力
こんにちは。接触角計コラム担当のT.Sです。接触角計コラムをご覧いただきましてありがとうございます。いきなりですが測定作業をしていると試料数が多かったり、あるいは作業が思うように進まなくて翌日も続けて作業に・・・なんてことはないでしょうか?そんな時に水や試薬がシリンジ内、もしくは保管容器から移した入れ物内に残っている・・・。
「これ、明日も使って平気なんだろうか???」
さぁ、どうなんでしょう?ということでやってみました。世の中にある試薬全てではやれないので、まずは当社の接触角測定でよく使っている水(純水、精製水、水道水)とジヨードメタンについて表面張力測定を行い、測定値の変化の有無を見てみました。劣化、もしくは何かしらの変化があれば測定値にも影響が出ると思いますが、果たして結果は???
測定は2日かけて行いました。初日に表面張力を測定した後、液が入ったままのシリンジを当社ラボ内の一般環境下で24時間放置。再度表面張力を測定しました。ここで「なぜ表面張力なのか?」と思われる方もいらっしゃると思いますので理由を。
接触角測定ですと測定値に固体試料の状態も関与するので純粋に液の状態の確認ができないのではと。表面張力測定で新品のシリンジと針を使用すれば、液の状態の変化の有無がはっきりわかるのではと考えました。以下、測定条件と結果になります。
測定条件
- 測定場所:あすみ技研LAB(一般環境)
- 測定環境:初日・・・温度24.4℃ 湿度54% 2日目・・・温度24.7℃ 湿度51%
- 針サイズ:25G
- プローブ液:純水(当社純水器より採取)、精製水(市販品)、水道水、ジヨードメタン
- 懸滴量:純水・精製水・水道水は9μL 、 ジヨードメタンは1.5μL
- 測定回数:初日、2日目共に各3回
- 測定時間:5秒(測定値は5秒経過時点での数値を採用)
測定結果
初日表面張力値・・・1:71.91mN/m 2:72.41mN/m 3:71.79mN/m
2日目表面張力値・・・4:72.41mN/m 5:72.48mN/m 6:72.60mN/m
初日表面張力値・・・1:73.08mN/m 2:72.65mN/m 3:72.11mN/m
2日目表面張力値・・・4:72.47mN/m 5:72.78mN/m 6:72.35mN/m
初日表面張力値・・・1:72.89mN/m 2:72.32mN/m 3:72.53mN/m
2日目表面張力値・・・4:71.77mN/m 5:72.19mN/m 6:71.80mN/m
初日表面張力値・・・1:48.95mN/m 2:48.31mN/m 3:48.58mN/m
2日目表面張力値・・・4:50.17mN/m 5:49.96mN/m 6:49.50mN/m
いかがでしょうか?これをご覧の皆さんはこの結果を見て劣化、変質していると思われますか?
当社では受託測定や何かしらの検証測定の際には都度純水は純水器より採取していますし、試薬についても使いきれる量で都度手配はしておりますが・・・
測定結果を見る限り、今回の測定環境と条件に限定はされますが翌日の使用であれば、使ったとしても・・・的外れな測定値にはならなそうです。もちろん新しい液が準備できるのであれば、それにするに越したことはありませんが。
今回のコラムが皆様の測定の参考になれば幸いです。今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
(T.S)