汚れの影響について
いつも弊社コラムネタをお読み頂きありがとうございます。今回は、試料を取り扱う際の汚れについて触れさせていただきます。
接着やコーティングの処理を行う際、金属や樹脂、ガラスなどの試料を洗浄されてますでしょうか。通常は、ニトリルゴム製の手袋などを装着されて測定作業を行っておられると思いますが、
「もし、素手で扱ったら、どれだけ濡れ性がかわるのか?」までは、あまり想定されていないと思います。今回は、あえて素手扱った場合とそうでない場合について、試料の汚れ具合が濡れ性にどう影響するのかを、接触角計を用いて簡単に比較してみました。
測定機材など
- 使用装置:B100
- 液体試料:純水
- 試料:ITO基板( Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)
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懸滴量:1μℓ
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各5ポイント測定
接触角測定条件
汚れの原因には、油汚れやコンタミの付着などあると思いますが、今回は身近な「皮脂」で行います。ITO基板を用いたのは、たまたまラボにあったからです(あくまで比較ですので)。
もちろん個人差(30歳台男性)はありますので、あくまで参考です。写真のような感じで、ぐりぐり押し付けています。
- 条件A:洗浄あり。測定前にIPAで拭き上げ洗浄。
- 条件B:洗浄無し。素手で試料を取扱っている事を想定して、素手の状態で親指を試料に押し付けて皮脂を付着。
測定結果
条件A
条件Aでは、ばらつきが少なく接触角はほぼ均一といえます。標準偏差は、0.67。
条件B
条件Bでは、ばらつきがあり過ぎてどれが試料本来の接触角なのかわからない状態となっています。標準偏差は、29.32と条件Aに比べばらつきが大きくなっています。
検証の結果、試料に皮脂などの汚れが付着していると、予想以上に濡れ性に影響が出ます。
実際には、厚さ1nm程度の微細な汚れでも濡れ性に影響がでるといわれており、多少は影響あるのかなと思っていたのですが、こんなに影響がある事に私としてもかなり驚きです。
コーテイング不良や接着不良の原因になる可能性がありますので、試料の取扱いの際は、事前に洗浄して頂く事をおすすめいたします。
(Y.S)