『自動』接触角計について
『自動』という言葉のついた接触角計が、他社さんも含め色々あるのですが、この『自動』という言葉が色々な意味でくせもので、お客様との仕様の確認の時に良く混乱の元になることがあります。当社にも「自動接触角計のお見積りお願いします。」というご連絡を良くいただくのですが、「どの辺が『自動』な装置をお求めですか?」とご質問させていただきますと、「う~ん・・・。」ということになるケースが多いのです。
今回はその辺りを少し整理したいと思い、何が『自動』かについて、今回まとめてみました。
『自動』接触角計の種類
まずは『自動』の種類です。ざっと挙げてみますとこんな感じでしょうか。
当社の対応 | |
接触角測定の画像撮影タイミングが『自動』 | ◎ |
ステージの移動(X軸、Y軸、Z軸)が『自動』 | 〇 |
液の吐出が『自動』 | 〇 |
接触角度の認識算出が『自動』 | ◎ |
接触角のピント調節が『自動』 | - |
接触角測定のタイミングが『自動』について
まず、接触角測定のタイミングが『自動』についてです。これにつきましては、以前にコラム「ME2とB100の違いについて」で述べさせていただきましたが、撥水性の測定では、特に不要。親水性の評価には無いと意味のないデータになりかねないといえます。ME2以外は、すべて液滴検出ラインでの液滴の有無で自動測定を行います。
当社の場合は、機種により『自動』の有無が異なります。
ステージの移動が『自動』について
次に、ステージの移動(X軸、Y軸、Z軸)が『自動』について。
X軸、Y軸については、正直な話、手動でも特に問題はないかと思います。もちろんあったほうが便利です。例えば、「100mm角の金属の表面を50箇所、5mmごとに接触角測定する」ケースとか・・・。当社でもカスタマイズ対応しておりますが、価格差に見合うほど利点を感じていただけるかは、お客様の使い方次第と言えます。
ところで、X軸とY軸、分かりにくいですよね。ぜひこちらのコラムもご一読ください。
他にもシリコウエハーのような円盤状のワークを『自動』で回転させ、複数個所の接触角を測定するものなどがあります。
(カスタマイズ対応可)
ステージの移動(X軸、Y軸、Z軸)の『自動』につきましては当社の場合、それぞれカスタマイズ対応になります。
さて、Z軸ですが、これは予算が許すならあったほうがベターと言えると思います。
液の吐出が『自動』について
これについても、1~2時間ほどマイクロシリンジをいじれば、0.01μℓ単位で吐出液量の調整はできるようになるかと思います。慣れれば簡単です。
ただどうしても出来ないのが、吐出のスピードの調整です。例えば、「液の吐出スピードを1秒あたり1μℓにしたい。」と言われても、人間の手ではまず不可能です。特に拡張収縮法で動的接触角を測定する場合は、オートディスペンサーは必須と言えます。
こちらは、オプション対応ですので、ご導入後からでも取付、ご購入可能です。
接触角度の認識が『自動』
これについては、昔の覗き込むタイプ(PCの普及以前)の接触角計では、手動でした。
こういう装置ですね。イラスト左側から覗き込むと、分度器みたいなのが現れ、液滴の端点を合わしてから角度を読む必要があります。CCDカメラなどは使用しませんので、当然液滴量が大きくなり、自重で液滴の形状が潰れてしまったりすることもあります。
今は現役ではほとんど見かけなくなり、たまにヤフオクで売られてたりするぐらいです(「部品取り、1万円、ノークレームノーリターンでお願いします。」みたいな感じで)。
当社の装置は、すべてPCのソフトウェア側で自動認識されますので、この自動につきましては、敢えて『自動接触角計』とはうたっておりません。
接触角のピント調節が『自動』について
最後に接触角のピント調節が『自動』についてです。デジカメやスマホのカメラでは当然ですが、これについては当社では未対応です。これには理由がありまして、市販のカメラと異なり、接触角計は、液滴の位置とカメラの位置はほぼ固定なので、ほとんど動かすことがありませんので、敢えて費用をかけて自動化する必要があるのか・・・。
結論
さて、結論です。予算の許す限り、『自動』な方が良いのはもちろんですが、現実問題そうもいきませんので、
- 動的接触角の拡張収縮法を測定する場合、オートディスペンサーは必須
- Z軸もあったほうがベター(予算が許せば)。
PS. 他社のウェブサイトを拝見していましたら、傾斜角測定時、傾けるのが手動という装置がありました・・・。角速度はどう測るのかな・・。
(K.O)