粉体濡れ性試験で得られるデータについて

あすみ技研のコラムをご覧いただきありがとうございます。今回は久々に粉体濡れ性試験についてのコラムとなります。

最近お問い合わせをいただく機会が増えてきた粉体濡れ性試験ですが、

「どのような測定方法でどのようなデータが得られるのかイメージがしにくい」

というお声を度々いただきます。

測定方法については別コラムにて既にご紹介しておりますので、今回は「どのようなデータが得られるのか」にフォーカスしてコラムを書いてみようと思います。

粉体の濡れ性評価方法

まず、そもそも粉体の濡れ性はどのように評価するのか?ということを簡単にご説明します。

濡れ性の評価というと接触角を用いるのが一般的ですが、粉体の場合は固体表面と違って液が浸透してしまうため、接触角を直接測定することができません。

そこで、この粉体濡れ性試験では、粉体層に浸透した液の重量を測定し、その結果からグラフの傾き(浸透速度係数)を求めてサンプルごとの濡れ性を比較・評価します(浸透速度法)。

さて、ここからは実際の測定画面(グラフ)を交えながら、どのようなデータが得られるのかをご紹介していきます。

浸透重量の測定結果

1回の測定が終了すると、右のようなグラフが描かれます。

 

  • 縦軸:浸透重量(g) 
  • 横軸:時間(sec)
浸透重量の測定結果
浸透重量の経時変化グラフ

このままでも何となく他のサンプルとの比較はできそうですが、浸透速度を数値化しようとすると、浸透中のグラフが曲線を描いているため、どの瞬間の速度を算出するかによって値が変わってしまいます。

これでは定量的な評価が難しく、グラフをできるだけ直線に近い形にして傾き(浸透速度係数)を求める必要があります。次はその方法について解説します。

浸透速度係数の求め方

浸透速度係数を求めるために、先ほどの〈浸透重量の経時変化グラフ〉の縦軸(浸透重量)の値を二乗したグラフを用意します。

なぜ縦軸(浸透重量)の値を二乗するとグラフが直線になるのかというと・・・長くなるのでここでは割愛させてください。

ざっくりとお伝えすると、この測定の基になっている【Lucas-Washburnの式】により、浸透重量の二乗と時間は直線関係になるとされているからなのですが・・・・詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。

さて、縦軸(浸透重量)の値を二乗すると、グラフはこのように変化します。

浸透重量の経時変化グラフ
浸透重量の経時変化グラフ
やじるし
浸透重量の二乗値の経時変化グラフ
浸透重量の二乗値の経時変化グラフ

浸透中のグラフ(赤枠部分)が直線に近くなったのがお分かりいただけるかと思います(理論上はここできれいな直線となるはずですが、実際は粒径や空隙が完全に均一ではないため、きれいな直線となることは稀です・・・・)。

あとはこのグラフ上で右のようにサンプリング時間を設定してあげると、ソフトが自動で浸透速度係数を算出してくれます。

浸透重量の二乗値の経時変化グラフ
浸透重量の二乗値の経時変化グラフ

この例の場合、浸透速度係数は3.449E-002(=0.03449)g2/sという値が算出され、この数値が大きいほど濡れ性がいいということになります。

このように浸透速度係数をサンプルごとに算出し、その数値とグラフをもって濡れ性を評価・比較します。

以上、粉体濡れ性試験で得られるデータについて、少しでもイメージしやすくなったと思っていただければ嬉しい限りです。

最後に、こんなグラフも描けますよ、というものをご紹介して終わりたいと思います。

あとほんの少しだけお付き合いいただけると幸いです。

受託測定で作成するご報告書には、通常は左下のような指定回数測定分のグラフ(浸透重量の二乗値の経時変化)をサンプルごとに載せていますが、それ以外にも右下のような別々のサンプルの比較グラフも作成できます。

 

「各サンプル、平均値に一番近いデータの比較グラフが欲しい!」など、ご希望を仰っていただければ喜んで対応させていただきます。

浸透重量の二乗値の経時変化グラフ ※5回測定分
浸透重量の二乗値の経時変化グラフ ※5回測定分
浸透重量の二乗値の経時変化グラフ ※3サンプル比較
浸透重量の二乗値の経時変化グラフ ※3サンプル比較

それでは、粉体濡れ性試験のお問い合わせ、ご依頼を心よりお待ちしております。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

(Y.O)