測定のコツ:静的接触角①

いつもお世話になっております。あすみ技研、接触角計コラム担当のT.Sです。

 

前のコラムで「測定のコツ・ポイント」にフォーカスしたコラムですが、思いがけず反響がありまして。読んでいただいてありがたいです。

「こういうやり方をしているのか」ですとか「こうやって調整すればいいのか」ですとか、

「取説のような文章でなく、このようなリアルな情報が欲しかった」等、色々ありがたいお声を頂きました。

そこで前回に続けて「測定のコツ・ポイント」について当社なりの考え方、手法をご紹介させていただこうかと思います。今回は静的接触角測定編です。長くなりそうなのでパート①、パート②の2部構成にします。それでは今回もよろしくお願いします。

静的接触角測定の流れとコツ

静的接触角測定の流れ

測定の流れとしては「共洗い」、「シリンジ内のエアー抜き」、「測定時の明るさとフォーカスの調整」、「測定」の順になろうかと思います。慣れてしまえば、一連の作業の流れは、意識せず出来るようになってしまいますね。

「共洗い」、「シリンジ内のエアー抜き」、「測定時の明るさとフォーカスの調整」については、「測定のコツ・ポイント~表面張力測定編~」をご覧ください。静的接触角測定でもやり方は同じです。

測定のコツ 其の一:針サイズについて

針サイズとその用途については文章で長々とつづるよりも見ていただいた方が早いかなと 思いましたので、下表を作ってみました。下表を参考に針を選んでいただければと思います。どれがいいか見当がつかない場合についてはとりあえず25Gの針でやってみていただければと思います。

針のサイズとその用途
表1.針サイズとその用途
20G針+テフロンチューブ画像
図1.20G針+テフロンチューブ

測定のコツ 其の二:着液のさせ方

結論からお話ししますと、測定毎の着液動作にバラツキが出ないように意識して測定を行っていただくことをお勧めします。こうお話しすると「そんなの当たり前じゃないか・・・」と思われる方もいるかもしれません。ですが懸滴量に注意される方はとても多いのですが、着液動作にまで気を配って作業する方はそこまで多くはいらっしゃいません。

今回せっかくですので着液動作が測定値に及ぼす影響についても簡単に触れていきます。

弊社接触角計は試料台を上下させることで懸滴を固体試料に着液させますが、この着液のさせ方が接触角測定値には影響します。着液のさせ方で測定値に影響を及ぼす要因としては・・・

①着液動作時の懸滴と固体試料の触れ具合 

※懸滴に固体試料を押し付けるように着液させる?それとも軽く触れさせる程度で着液させる?

  • 押しつけるとは?・・・針先に接するまで固体試料を上昇、着液。(懸滴は押しつぶされる。)
  • 軽く触れるとは?・・・(目安として)懸滴の下端から1/4程度の高さまで固体試料を上昇、着液。

②懸滴と固体試料が触れた後、試料台を下げる時の速さ

上記の①、②で着液させた時の液滴の形状、測定値が変わる場合があります。まずは「着液動作時の懸滴と固体試料の触れ具合」から見ていきましょう。

着液動作:押し付け

押し付け前
押し付け後

着液動作:軽く触れる程度

着液(軽く触れる)
軽く触れる。あと

いかがでしょうか。触れ具合の違いで測定値(接触角で約5℃)にこれだけの差が生じる可能性があるということがおわかりいただけると思います。これが毎回違えばそれが測定値のバラツキになる可能性はあります。もちろん固体試料の表面状態も関係するので一概には言えませんが。測定毎の着液動作をが可能な限り、同じなるようにしていただくことを推奨致します。

それでは次に「懸滴と固体試料が触れた後、試料台を下げる時の速さ」について見ていきましょう。

試料台の下げる速さによる影響
試料台を下げる速度:速い
試料台の下げる速さによる影響:速い場合
試料台を下げる速度:ゆっくり

試料台を下げる速さについては手動の為、厳密に速度〇〇mm/secと□□mm/secのような比較はできませんが、それでも試料台を下げる速度を意識的に速くした場合と遅くした場合で、これだけ着液後の液滴形状と接触角に影響が出ることがあるというのはおわかりいただけると思います。試料台を下げる速さも可能な限り、同じにしていただくことを推奨致します。

測定のコツ 其の三:懸滴の量について

静的接触角測定時の懸滴量については弊社の考えとしては0.5μL~1μLを推奨しております。なぜ上記の懸滴量かといいますと・・・・これ、懸滴量については過去にコラム記事、書いてるようですね。あれ私、書いたかな・・・・?(笑)同じ内容を書くのもアレなので、懸滴の量についてはこちらを一読ください。

「静的接触角測定のコツ・ポイント①」のコラム、いかがでしたでしょうか?懸滴量に注意するのはもちろん、着液動作も可能な限り、バラツキの出ないように作業していただくと測定結果のバラツキも少なくなり、再現性も確保できるのではと思います。今回は分かり易いように、敢えてかなり極端に行いました。

ですので「手動じゃダメじゃないか」なんて思わないでください(苦笑)。手動でも意識してやっていただければバラツキは十分抑えられます。 

 

今回のコラム、測定の際のご参考にしていただければ幸いです。次回、パート②では「測定結果の再解析」について書いていこうかと思います。

今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

(T.S)