測定原理(上面観測)
これまでの側面からの観察による濡れ性評価に対し、新たな手法としての『濡れ性の上面観測』の測定原理を説明します。
従来の接触角測定
一般的に接触角測定とは固体試料に着液させた液滴の接触角を液滴側面より測定することを指します。図1が接触角測定に使用する接触角計イメージ図、図2が実際の測定画像になります。
接触角の側面測定には「着液させた液滴が真円上に濡れ広がっている」ことが前提条件です。実際の測定では、ある一方向からの側面測定となる為、液滴の濡れをそのように仮定します。
この際問題になるのが、写真③、④、⑤のように液滴が真円状に濡れ広がらない場合です。
写真④と⑤は同じ試料について接触角を測定した時の画像になります。写真③は写真④、⑤の上面画像です。表面が平滑でない、あるいは清浄性が均一でない試料の接触角は濡れ広がり方が方向によって異なる場合があります。
つまり接触角は測定する方向によって異なる場合もある為、側面測定の結果には曖昧さも含まれていることになります。
上面観測が必要とされるケース
先ほど例にも挙げましたが、接触角測定の目的が対象試料の平滑性や清浄度の均一性の場合に側面測定でそれを確認しようとした場合、最低でも2回は測定する必要があるということは想像に難しくないと思います。
但し、この方法だと対象となる試料が多くなってくると測定の負担は通常の接触角測定よりも倍増する為、大きな負担となってきます。このようなケースでは上面観測が有効な測定方法となります。
上面観測を取り入れれば1回の測定で液滴の濡れ広がり全体を確認できます。もちろんこれは画像として取得するだけではなく、画像を専用ソフトで解析することによって液滴の真円度や直径等の情報も得ることが可能です。
側面測定では平滑性や清浄度の均一性は確認できてもそれを何かしらの指標として表すにはデータの編集作業が必要となります。一方、上面観測であれば平滑性や清浄度の均一性を「真円度」という指標として簡潔に且つ定量的に表すことができます。
側面測定で試料の平滑性や清浄度の均一性を確認
- 確認するには最低でも2回の測定が必要。
- 指標として表現するにはデータの編集作業が必要
上面観測で試料の平滑性や清浄度の均一性を確認
- 画像解析により濡れが真円にどれくらい近いかを数値化
- 側面測定のように複数回測定の必要がなく、1回で完結
このようなケース以外にも凹凸があるような試料表面の濡れ性測定に対して凹部の測定を考えた時、形状によっては側面測定では測定不可の場合もありますが、上面観測であればこのようなケースでの測定にも対応可能です。
側面測定で凹部の接触角測定をした場合
側面測定ではカメラ~液滴間に試料の一部が映り込み、測定の妨げとなってしまいま
すが、上面観測対応接触角計であれば、シャーレやドーム形状のワークの内壁などの試料の接触角も測定可能です。
上面観測の仕組み
図6:上面観測の仕組み
図6は上面観測対応接触角計のイメージ図となります。上面観測対応の接触角計では側面と上面の二方向からの測定となります。先ほど側面測定では一方向からの測定となる為、測定結果には曖昧さも含まれるということをご説明しましたが、上面観測であればそのような曖昧さもカバーすることが可能となります。
上面観測を可能にする為には当然ながら装置上方にもカメラを設置する必要があります。
ですがシリンジのセット位置を側面測定用接触角計と同じままにしてしまうとカメラの視野にシリンジが映りこんでしまい、測定の妨げになってしまいます。
そこで弊社の上面観測対応接触角計では「長曲げ針」と呼ばれる直角に曲げた針を用います。
この直角に曲げた針を用いることで試料に対して従来通りの真上からの着液が可能となる他、針が上面測定の際の画像取得の妨げになりにくくなります。
上面測定の解析可能項目
濡れ面積 | : | 液滴を上から見た際の濡れ面積 |
真円度 | : | 液滴を上から見た際の濡れの形状がどれだけ真円に近いかの指標 |
面積/液量 | : | 着液量に対してのぬれ広がり指数 |
周囲長 | : | 液滴輪郭から求めた周囲長 |
接触角(上面) | : |
着液した液滴を球欠※1と見なし、初期着液量と近似円の直径から求めた接触角。※2 |
直径(上面) | : | 液滴輪郭から求めた近似円の直径 |
液高(上面) | : | 初期着液量と近似円の直径から求めた液滴の高さ |
近似円面積 | : | 液滴輪郭から求めた近似円の濡れ面積 |
※1 球欠(きゅうけつ)とは、球を1つの平面で切り取ったときにできる立体のこと。
※2 極端に濡れが良く、側面観測では実際の液滴端点が光の回折で薄くなってしまって見えないような試料の場合の参考値となります。
上面観測による接触角の算出原理
まず、前提として着液した液滴の形状が「球の一部である」こととしています。
側面カメラにより、着液前の液滴量と着液後に針先に残った液滴量を測定し、その差を初期液滴量(V)とします。
V=着液前の液滴量-着液後に針先に残った液滴量
次に上面カメラにより液滴の輪郭の近似円の直径(d)から、着液半径(r)、液高(h)を求め、θ/2法により接触角を算出します。
接触角が90°以下の場合(d/2<h≦d)は、上面から測定した液滴の輪郭の近似円の直径dが着液径となります。
この場合、着液半径rと液高hは、下記の通り求めることができます。
ここで、下記のように定義します。
対象機種のご案内
あすみ技研では多くの御客様に上面観測対応接触角計をご利用いただけるように努めております。販売はもちろん、御購入前に一度試したいという御客様にも上面観測に対応した接触角計レンタル機の御用意をしております。