超高粘度液の測定

『高粘度の液なのだが、接触角を測定することはできないか?』というお問い合わせに対し、対応した事例です。意外と多くご相談をいただきますが、色々なケースがありますので(特に粘度が皆様まちまちです)、あくまで一例として、「こういったやり方もありますよ。」という参考例です。

 

高粘度の液体の接触角測定の場合、何が問題かというと、

  1. シリンジはヒーターでなんとかなるにしても、針を通過中に液が固まってしまう。
  2. ワークに着液したら、冷えて固まる。

の二点です。

 

2の「ワークに着液したら、冷えて固まる」は、ヒーターステージを利用すれば、まあなんとかなります。(液体金属のように融点が高いと難しいですが・・・)

 

で、問題は1番の「シリンジはヒーターでなんとかなるにしても、針を通過中に液が固まってしまう。」です。

 

実際に液が吐出できるか試してみます。

折れたシリンジ

粘度が高く、先端から液が出ません。ちょっと粘度が高くなると、いくら針を太くしても吐出できません。

 

で、冷えると固まって、シリンジがすぐ割れてしまいます・・・。


折れたシリンジ3本

諦めが悪く、何度も試してみます。

 

 

が、吐出できません。割れます・・・。


で、ここで気づきます。「無理に吐出しなくてもいいのでは・・・」

 

今回は、「針先に液を付着させ(できる限り同じ液量で)、それを加温した固体に付着させて接触角を測定する」という方法で行ってみました。

  • 使用機種:B100
  • 液体  :接着剤(60℃に加温)
  • 固体  :同じく60℃に加温

液体自体を加温します。

 

今回はシリンジヒーターを使用せず(使用しても針通過時にかたまりますので)、直接温めます。

液体を加温画像

液体付着画像

そして、針先につけて、固体に着液させます。

この際、できる限り液量は一定にしたいのですが、そこは作業者次第です。

 

実際に針先に付着した液量は、ソフトウェアの方で測定され記録されますので、何回か行えば、結構一定量にすることができるかと思います。


測定結果

サンプルNo.1

  • 固体試料温度:60.4℃
  • 液体温度  :59.4℃
  • 接触角平均値:42.4°(標準偏差:3.83)
  測定ポイント
1 2 3 4 5
接触角(°) 37.79 43.26 41.11 41.58 48.26
着液量(μℓ) 1.46 1.26 1.51 2.55 1.21

サンプルNo.2

  • 固体試料温度:60.4℃
  • 液体温度  :59.2℃
  • 接触角平均値:50.8°(標準偏差:1.30)
  測定ポイント
1 2 3 4 5
接触角(°) 52.33 49.12 50.28 51.88 50.44
着液量(μℓ) 0.98 0.98 0.97 0.94 1.40

サンプルNo.3

  • 固体試料温度:60.4℃
  • 液体温度  :59.2℃
  • 接触角平均値:29.9°(標準偏差:1.34)
  測定ポイント
1 2 3 4 5
接触角(°) 29.73 30.83 30.53 27.76 31.07
着液量(μℓ) 1.09 1.49 1.47 1.65 1.54

液量については、何回か練習すればある程度まで一定にすることが出来そうでした(どのサンプルも1件だけ外れた数値がでてますが・・・。まあ、慣れれば液量は何とかなりそうです)。