上面測定ができる試料、できない試料

いつもお世話になっております。コラム担当のT.Sです。

今回は「上面測定ができる試料、できない試料」がテーマです。よろしくお願いします。

さて、接触角測定と言いますと「側面測定」を指すことが一般的ですが、その側面測定には前提条件があります。

その条件とは「着液させた液滴が真円状に濡れ広がっていること」です。

側面からの測定では一方向からの測定となる為、液滴の濡れをそのように見なす必要があるのです。ただ実際は図①、②、③のように液滴が真円状に濡れ広がらないケースもあります。

上面観測の可否事例画像

写真②と③は同じ試料について接触角を測定した時の画像になります。写真①は写真②、③の上面画像です。表面が平滑でない、あるいは清浄性が均一でない試料の接触角は濡れ広がり方が方向によって異なる場合があります。つまり接触角は測定する方向によって異なる場合もある為、側面測定の結果には曖昧さも含まれていることになります。

そこで登場するのが今回のコラムテーマの「上面測定」です。

 

上面測定を用いれば濡れの真円度もわかるので、側面測定以上に細かな濡れ性評価ができるようになります。まぁその分評価、判断に使えるデータが増えますので悩ましくもなったりするのですが、それはまた別の話ということで・・・・。ただ上面測定についてはそれができる試料とできない試料がありますので、今回はそれについてのご紹介となります。

さて、上面測定ができる試料の条件ですがそれは・・・・ずばり「反射像が取れるもの」になります。当然これだけでは「???」っとなると思いますので、具体例を交えてご説明させていただきます。

上面測定事例

実際の測定画像を見ていただくとわかりやすいと思いますので、測定事例①~④をご覧ください。

測定事例① スマートフォン表面(黒色で光の反射有)

測定対象

測定対象:スマートフォン(私物)

表面:樹脂(保護フィルム)

着液側表面色:黒色、反射あり

 


黒色板(光反射あり)側面観測
黒色板(光反射あり)側面観測
黒色板(光反射あり)上面観測
黒色板(光反射あり)上面観測

測定事例② ステンレス板(銀色で光の反射有)

SUS板

測定対象:ステンレス板

表面:No.2B

着液側表面色:銀色、反射あり


ステンレス板(銀色、反射有)側面観測
ステンレス板(銀色、反射有)側面観測
ステンレス板(銀色、反射有)上面観測
ステンレス板(銀色、反射有)上面観測

測定事例③ 黒色金属板(光の反射無)

黒色金属板(光反射無)
黒色金属板(光反射無)

測定対象:樹脂板

材質:アルミ

着液側表面色:黒色、反射無し


黒色金属板(光反射無)側面観測
黒色金属板(光反射無)側面観測
黒色金属板(光反射無)上面観測
黒色金属板(光反射無)上面観測

測定事例④ 白色樹脂板(光の反射無)

白色樹脂版
白色樹脂板(光反射無)

測定対象:樹脂板

材質:ナイロン

着液側表面色:白色反射無し


白色金属板(光反射無)側面観測
白色金属板(光反射無)側面観測
白色金属板(光反射無)上面観測
白色金属板(光反射無)上面観測

測定事例①~④の中で反射像が鮮明に取れる試料、つまり写真①と②については測定画像も明暗がハッキリとした画像が取得できるので試料の色に関係なく測定はできます。

 

反対に反射像が取りづらい試料、つまり測定事例③と④については光量調節しても測定画像の明暗がハッキリせず、全体的に黒っぽい画像の取得しかできないため、解析作業ができません。解析ができないというのは接触角計の解析方法が画像を二値化処理していることに依ります。

ざっくりですが、明暗がハッキリしないとソフト側は測定画像を「黒のベタ塗」のように認識してしまって解析ができないという感じです。上面測定は濡れ性評価において側面測定以上に細かな濡れ性評価ができるデータが得られますが、測定可能な条件は側面測定よりも制限があります。

今回コラムが上面測定をお考えの御客様のお役に少しでも立てば幸甚です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。              

(T.S)