シリコンウェハの動的接触角測定(傾斜法)

いつもお世話になっております。あすみ技研、接触角計コラム担当のT.Sです。今回のコラムは「シリコンウェハの動的接触角測定(傾斜法)」についてです。よろしくお願いします。

傾斜法で動的接触角測定をされている御客様から「固体試料の表面状態が良好・均一ではないせいか、測定データが暴れてしまう。表面状態が良好で均一な場合にはどれくらい整ったデータが取れるのか一例があったら参考にしたいので見せてほしい。」という要望をいただきました。ちなみに表面状態が良好・均一でないと見なされる表面では下図のようになる傾向にあります。この時は測定箇所を変えて5回測定を行いましたが、表面状態が良好・均一であるとは言い切れない結果となりました。

シリコンウエハの動的接触角

表面状態が良好・均一でない場合に液滴の形状は転落している部分によって変化します。

スムーズに転落したかと思えば、急にブレーキがかかったように転落が止まってしまったりといった具合です。トライボロジー(摩擦学)で言うところのスティックスリップ現象のようなイメージです。表面状態が不均一であれば転落時の液滴形状の変化も大きくなり、動的接触角値も連続的に滑らかな変化ではなくなることもあるということです(測定間隔に依る所もありますが・・・・)。そこで今回は御客様よりお問合せいただいた表面状態が良好・均一な固体試料の場合、どれくらい整ったデータが取れるのかを実際に測定してみようという試みになります。測定する固体試料はシリコンウェハです。シリコンウェハであれば表面状態が良好・均一な固体試料の測定事例としては適当ではないかと。さて、どのようなデータが取れるでしょう?それでは測定をしてみます。今回の使用装置、条件は下記の通りです。

測定条件

  • 使用装置:接触角計B100W
  • 固体試料:シリコンウェハ
  • 傾斜速度:1°/sec      
  • 懸滴量:約15μL ※針先残液有る為、着液量としては約13μL~14μL
  • 固体試料の測定前処理:無

測定結果

シリコンウエハ測定結果

滑らかなグラフ・・・とは言い切れない結果ではありますが表面状態の良好さと均一さの程度という観点からすれば冒頭で紹介した試料の結果よりも、このシリコンウェハの表面状態は良好・均一であると言えます。

グラフを見てもらえればわかるのですが、冒頭で紹介した試料の結果よりも後退角の変化に再現性があることは明らかです。また後退角の偏差についても冒頭で紹介した試料の結果よりも小さいことも見て取れます。表面状態が良好・均一であると測定データはこのような傾向となるはずです。

動的接触角測定(傾斜法)は測定時の条件も大事ですが、それと同じくらい固体試料の表面状態も測定結果に大きく影響します。表面状態によってはなかなか評価、判断するのに難しい結果となることもあるかと思いますがその場合には独自の評価、判断基準を設ける必要があると思います。今回のコラムが少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

(T.S)