超撥水表面の表面自由エネルギー

いつもお世話になっております。接触角計コラム担当のT.Sです。今回は「超撥水表面の表面自由エネルギー(surface free energy:SFE)」です。

今回用意した超撥水表面は「ヨーグルトのフタ」です。以前のコラムの「身近な物の接触角:第1弾」でも登場しているやつですね。超撥水なのは以前のコラムでわかりましたが、表面自由エネルギー値であればどれくらいの値になるのでしょうか?あれだけの撥水性能なので少なくとも表面自由エネルギー値とその中の水素結合力はかなり低いのではないかという予想は立ちますが実際はどうなんでしょうか・・・・。それでは今回もよろしくお願いします。

測定条件

それではさっそく測定してみます。条件は下記のとおりです。

  • 測定場所:あすみ技研LAB ← ラボ紹介コラムありますので、よろしくお願いします。
  • 測定環境:温度24.6℃ 湿度54%
  • 試薬:純水(当社純水器から採取)、ジヨードメタン
  • 表面自由エネルギー理論:Owens and Wendt
  • 固体試料:ヨーグルトのフタの裏
  • 針サイズ:純水、ジヨードメタン共に30G
  • 静的接触角測定時の懸滴量:純水1.5μL、ジヨードメタン1μL

※純水も1μLで測定したかったのですが、超撥水表面には1μLでの着液ができませんでした・・・・。まだ修業がたりないということですね・・・・。

  • 測定回数:5回  ※表面自由エネルギー計算は測定5回の平均値を採用

静的接触角測定結果

試薬/N数 N1 N2 N3 N4 N5 平均値
純水 146.33° 147.08° 148.90° 145.72° 147.11° 147.03°
ジヨードメタン 116.98° 122.79° 112.71° 116.44° 116.23° 117.03°
図1.ヨーグルトのフタと純水の静的接触角
図1.ヨーグルトのフタと純水の静的接触角
図2.ヨーグルトのフタとジヨードメタンの静的接触角
図2.ヨーグルトのフタとジヨードメタンの静的接触角

試薬2種類の表面自由エネルギーと各成分(既知)

  分散力(d) 水素結合力(h) 表面自由エネルギー
 純水 21.80 51.00 72.80(mJ/m2)
ジヨードメタン 49.50 1.30 50.80(mJ/m2)

表面自由エネルギー計算結果

  • 分散力(d):4.22  
  • 水素結合力(h):0.27  
  • 表面自由エネルギー値:4.49(mJ/m2)

表面自由エネルギー計算値がヒトケタ台・・・しかも水素結合成分が0.27・・・私、初めて見ました。撥水性材料のテフロンでももう少し計算値が高いのに、これはなかなか見られない数値かもしれないですね。もしテフロンの表面自由エネルギー計算に興味ある方はこちらの記事、読んでみていただければと思います。

 テフロンの表面自由エネルギー計算はこちら

いつも楽しみながらやってはいるのですが、今回はいつも以上に楽しくやれました。初めて見る数値もありましたし。今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

(T.S)

P.S しばらくしてから当社にマイクロスコープ(こちらもレンタル可能です)があるのを思い出し、裏蓋の表面の状態を撮影してみることにしました。

ランダムではありますが、表面が凸凹した状態が見て取れます。本当はもっと拡大できればいいのですが、身近にある装置ではこれが限界でした。ご参考まで。

追記 2023.04.25

より高性能なデジタルマイクロスコープを導入したので、表面の状態を取り直してみました。倍率は左が300倍、右が1000倍。白っぽく見える部分が凸部です。

マイクロスコープ表面観察1
マイクロスコープ表面観察2

ちなみに今回使用したのはキーエンス製のデジタルマイクロスコープで、最大2000倍の倍率まで観察可能です。表面分析などのご依頼も承りますので、是非お声がけください。