測定のコツ:表面自由エネルギー(SFE)計算

いつもお世話になっております。あすみ技研、接触角計コラム担当のT.Sです。

「測定のコツ・ポイント」シリーズのコラムを書いてきましたが、そのテーマも残りがわずかとなってきました。今回コラムは「表面自由エネルギー(SFE:Surface Free Energy)計算のコツ・ポイント」についてです。「表面自由エネルギー計算で使う試薬の選び方」について書いたコラムもありますので、ぜひ合わせてご一読お願いします。

参考になる部分がありましたら、実践してみてください。それでは今回もよろしくお願いします。

表面自由エネルギー計算の流れとコツ

表面自由エネルギー計算の流れ

測定の流れをご紹介する前に表面自由エネルギー計算を初めてご検討されている方へ簡単に表面自由エネルギー計算についてご説明したいと思います。

表面自由エネルギー計算とは?
固体における液体の表面張力にあたるもの。液体の表面張力は直接測定できますが固体の表面張力は直接測定できないので、成分が既知の複数の試薬を使って接触角を測定し、その結果から固体の表面張力にあたる表面自由エネルギーが計算できます(計算は接触角測定を入力すると自動計算されます)。

とまあこういうことです(苦笑)。ざっくりですね。

もう少し詳しく知りたい方は下記リンクも頑張って読んでみてください。

 

表面自由エネルギー計算で使う試薬の選び方」とここの内容は重複しますので、ご存じの方はスルーしてください。

さて、ここからが測定の流れになります。

流れとしては、

  1. 共洗い
  2. シリンジ内のエアー抜き
  3. 測定時の明るさとフォーカスの調整
  4. 測定

の順になります。

「共洗い」~「測定時の明るさとフォーカス調整」の方法につきましては以前にコラムでご紹介させていただいた「表面張力測定のコツ・ポイント」、「測定」の方法についても同様に以前コラムでご紹介した「静的接触角測定のコツ・ポイント」と基本的には同じになります。ただ「基本的には」の言葉通り、少し違う部分がありますのでその部分を「コツ」として詳しくご紹介していきます。

測定のコツ 其の一:使用するディスペンサーの数

表面自由エネルギー計算には2液ないし3液の試薬による接触角の測定が必要です。試薬については「表面自由エネルギー計算で使う試薬の選び方」をお読みください。測定の際に使うディスペンサーは使う試薬の数だけご用意することを推奨します。間違いなく測定作業がスムーズに行えます。 

弊社では写真①のようにして行っています。

表面自由エネルギー計算のディスペンサ
写真①:理論式「Owens and Wendt」の場合のディスペンサの準備例

写真①のようにして測定前にディスペンサを準備しておけば、スムーズに測定をすることができます。ディスペンサにセットしたシリンジを交換するのと、ディスペンサを2本用意してそれごと交換するのでは後者の方が圧倒的に作業性が良いです。測定前準備の「共洗い」、「シリンジ内のエアー抜き」、「測定時の明るさとフォーカスの調整」については 「表面張力測定のコツ・ポイント」に書いてあるように行っていただければよいです。

測定のコツ 其の二:針サイズについて

ここでは一般的によく使われる3つの試薬と、その試薬での接触角測定に使用する針サイズについてご紹介をします。この3つの試薬で接触角を測定すれば、弊社で採用している表面自由エネルギー計算の理論式5つのうち、4つをカバーすることが可能です。

まず一般的によく使われる3つの試薬ですがそれは「水」、「ジヨードメタン」、「n-ヘキサデカン」と呼ばれるものになります。先ほど表面自由エネルギー計算には「2液ないし3液の試薬による接触角の測定が必要」と書きましたが、厳密には「成分の異なる2液ないし3液の試薬による接触角の測定」が必要となります。成分が異なるということは表面張力値も違うので使う針のサイズも違う場合があります。

弊社ではそれぞれの試薬について下記の針サイズで測定を行っています。

  • 水:25G
  • ジヨードメタン:25G
  • n-ヘキサデカン:20G(先端にテフロンチューブ取付)

針サイズについて

低表面張力液の接触角測定(テフロンチューブ)

 

「n-ヘキサデカン」については表面張力が低く、針先に液が濡れ上がってしまうことも多いので、針先にテフロンチューブを取付けて撥油効果を付与します。そうすることで測定時に安定して懸滴を作成することができるようになります。

測定のコツ 其の三:着液のさせ方・懸滴量

これについては既にアップされているコラムの「静的接触角測定のコツ・ポイント①」、「懸滴量の考え方」に書かせていただいていますので、ぜひご参照ください。 

着液の方法や懸滴量によっても接触角は変わる可能性があります。接触角が変われば当然

表面自由エネルギー計算の結果も変わりますので注意が必要です。

いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介させていただいた内容を踏まえて測定と計算を行っていただければ、スムーズに作業が進められると思います。計算は測定した接触角の値をソフトに入力すれば自動で行ってくれますので簡単です。ただ表面自由エネルギー計算は奥が深く、最も悩ましいのは計算結果の評価と私個人としては思っています。私自身がレベルアップした時にはそのことについてコラムに書こうと思っていますので、よろしくお願いします。それでは今回はこのあたりで。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(T.S)